傷病手当金の支給額
金額がいくらくらいになるのかは、給与明細に健康保険料をいくら支払っているか確認できれば、早見表から大体の金額はわかります。
問題なのは、休職中や退職してからも払わなければならないお金がありますので、実際いくらくらい手元に残るのかを知っておきましょう。
平成28年4月の法改正により、計算方法が変わりました。新しい計算方法を解説します。
Contents
標準報酬月額を確認する
標準報酬月額とは、保険料を算出するために報酬を50等級(50段階)に区分したものです。通常4月~6月までの給料の平均をみて等級を区分し、年に一度見直されています。
自分の標準報酬月額を知りたい場合は、給与明細に健康保険料や介護保険料が記載されていれば、下記のリンクから支払っている金額を探せば自分の標準報酬月額がわかります。
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標準報酬月額表(平成29年4月~協会けんぽ・東京都)
使い方:給与明細を見て健康保険料や介護保険料の控除額を探します。その金額を健康保険料の欄から探し当てはまる、もしくは最も近い金額の列の左端に標準報酬月額がありますので、その額がご自身の標準報酬月額だと ...
ただし、表は協会けんぽの東京都の場合ですので、会社の健康保険組合やその他の健保の場合は、組合が標準報酬月額表をネットなどに公表していない場合、正確に知ることはできません。(協会けんぽの金額を参考にすることはできます。)
※標準報酬月額の計算方法は、週休制や時給制の方の場合や、5月は病欠があって15日くらいしか働いていない場合、昇給があって9月にグンと給料が上がった場合など、決め方や改定の細かなルールがあるので、正確な標準報酬月額を計算することが困難です。よって正確な数字(等級)を知りたい場合は、自分の加入する健康保険組合に聞くのが一番確実です。
※参考:協会けんぽ:標準報酬月額の決め方
大まかな計算方法
大まかな計算で良い場合は、例えば4月の報酬が25万円、5月も25万円、6月が24万円の人の場合は、(25+25+24)÷3=24.6万円なので、下の表の報酬月額の欄で24.6万円が入る欄を探して、左側の欄を見ると標準報酬月額が24万円であることがわかります。※報酬(いわゆるお給料)には住宅手当や営業手当、役職手当、通勤手当、残業手当などすべて含みますが、ボーナス(賞与)は含みません(年に4回以上もらっていれば含みます)(健康保険法第3条5項)。
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傷病手当金日額早見表
平成28年4月の法改正により、傷病手当金の計算方法が変わりました。この表は平成28年4月1日からの新しい計算方法です。 表の見方:直近の給料の平均を計算して報酬月額の欄に当てはまる金額を見つける。その ...
直近の1年間大きく給料が変動していない場合は、24万÷30×(2/3)=5,333円位が1日の大まかな傷病手当金の金額となります。(表の右端の欄)この場合、30日間休んだのであれば5,333円×30日=159,990円が大まかな1か月の支給額となります。なお、土日祝日やお盆休み・正月休みなどはマイナスしなくても大丈夫です。
また、給料は出ないが住宅手当が3万円出た場合は、30,000円÷30日=1,000円が1日の傷病手当金から引かれることになります。
その他、6カ月の通勤定期代などがすでに支払われていた場合なども、同様に一日単位の調整額を計算し、すでに支払われている分を調整します。具体的な調整方法は、各保険組合によります。
正確な支給額の計算方法と例
標準報酬月額は基本的に一年間同じですので、給与明細を確認していき健康保険料が上がったり下がったりしていないか確認してください。変更があるとすれば8月と9月の健康保険料を比較して金額が大幅に変わっていれば、変更されている可能性がありますので、標準報酬月額表から推測する必要があります。(ボーナスの健康保険料は考慮しなくても大丈夫です。)
上の図の例だと平成29年4月1日から休職するとして、平成28年5月から8月までの標準報酬月額が22万、9月から平成29年4月までの標準報酬月額が24万だとした場合、すべてを足して割る12をして、さらに30で割り(ここで1の位を四捨五入)、その金額の3分の2(小数点第一位を四捨五入)が1日当たりの傷病手当金になります。
式:(22万+22万+22万+22万+24万+24万+24万+24万+24万+24万+24万+24万)÷12÷30=7,777(1の位四捨五入)=7,780×(2/3)=5,186.6(小数点第一位を四捨五入)=5,187
この例だと1日当たりの傷病手当金は5,187円で平成29年4月1日から30日間休んだ場合の傷病手当金は155,610円(4月1日~3日までが待期期間の場合は140,049円)が支給額となります。なお、そのまま5月も31日間休んだ場合は、5,187円×31日間=160,797円となります。
支給開始日以前が12カ月に満たない場合の計算方法
この場合は、まず支給開始日の月以前の継続した各月の標準報酬月額を最初の例のように足して平均を出します。その額と、加入する保険組合の全被保険者の前年度9月30日時点(例だと平成28年9月30日)の標準報酬月額の平均を比べ、低い方を使って最初の例と同じように÷30×2/3をして傷病手当金を計算します。
この全被保険者の標準報酬月額の平均は平成28年(9月30日)年度は協会けんぽの場合は、28万円ですが、加入している保険組合によって金額は変わります。大きな企業の健保組合などなら40万くらいの場合もあります。加入する保険組合の計算に使う平均額を知りたい場合は、ホームページなどで公表されていないか調べるか、載っていなければ直接問い合わせれば教えてもらえます。
支給開始日以前が12カ月にあと1、2か月足らないといったときに、自身の標準報酬月額が保険組合の平均より明らかに高い場合は、1、2か月をあえて有休を使って休むことや、傷病手当金を申請しないということを考えた方が良い場合があり得ると思いますので、よく確認するようにしましょう。
参照:健康保険法 第99条(傷病手当金)※平成28年4月改正
2 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。
一 傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)
二 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の九月三十日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)
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保険組合が変わった場合
可能性としてあり得るのは、傷病手当金を受給して休んでいる時に加入している保険組合が合併したり、解散したりして強制的に新しい保険組合に加入した場合などが考えられます。
本来、支給を始めた日から傷病手当金の金額は変わらないのですが、保険者が変わった場合は、傷病手当金は新しい保険組合の計算方法によって計算し直されることになります。
その場合、当然、支給前の12カ月間の標準報酬月額がないため、新しい健康保険組合の全被保険者の平均額を使うことになります。
よって、平均より多い金額をもらっていた場合などは、ガクッと金額が減る可能性があります。また、金額は減っても傷病手当金の支給期間は、前の保険組合で支給を始めた日から1年6月は変わらないので、支給期間が延びることはありません。
なお、転職するなどしても、協会けんぽから協会けんぽのように保険者に変更がなかった場合は、同一の病気やケガにより傷病手当金を受給するときは、傷病手当金が上の例のように再度計算されることはありません。(前の会社を退職してから原則1か月以内に再就職した場合は通算する(協会けんぽの場合))
退職と同時に傷病手当金を受給する場合の支給を始める月の属する月の標準報酬月額
退職後の継続給付を受ける場合、被保険者の資格喪失後に計算のために用いる傷病手当金の支給を始める月(日)が始まる場合があります。(在職中は有休を使っていたため傷病手当金の受給資格は満たしていたが、支給を受けていなかった場合など)
例:3月31日退職 4月1日より傷病手当金支給
この場合、退職しているので計算に用いる標準報酬月額がない状態になります。(※任意継続保険に加入した場合は、標準報酬月額が存在しますが上限があり平均の計算には使わない。)
そのため、支給を始める日を被保険者資格の喪失の前日として退職した月以前の継続した12カ月間の平均を算出して傷病手当金を計算することになります。※退職後に国民健康保険に加入した場合でも任意継続保険にした場合でも計算方法は同じなので、継続給付の場合の傷病手当金の金額は変わらない。
なお、退職日に出勤すると退職後の継続給付が受けられない場合がありますので、下記のページで確認しておいてください。
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退職日が要注意!継続給付の要件
退職後の継続給付 ここから退職後も継続して傷病手当金を受給する場合の話になります。 たぶん、一番大切な話になってくると思いますので、退職を考えている方はしっかり理解してください。 退職した後も傷病手当 ...
忘れてはいけない社会保険料と住民税の支払い
傷病手当金の金額の計算はこれで終わりですが、ここから忘れてはいけないのが健康保険料と厚生年金保険料と住民税の支払いです。傷病手当金をもらって療養中でも、基本的に社会保険料(育児休業中を除く)や住民税の免除はありませんので支払いが発生します。(雇用保険料は免除というか給料がなければ保険料が発生しない。所得税は傷病手当金にはかからない。)
通常は給料から天引きされているので支払っている感覚はないのですが、休職して天引きする給料がなくなるため、会社に支払わなくてはならなくなります。(会社が傷病手当金から天引きしてくれる場合もありますし、請求書が届く場合もあります。)
標準報酬月額が30万円の場合、健康保険料14,995円+厚生年金保険料25,680円+住民税約1万円=約5万円(協会けんぽ・40歳未満・東京都の場合※住民税は前年の所得や控除により異なります)が毎月、必要となるため、実質の生活費(傷病手当金から社会保険料を引いた金額)は月給が約30万円の人で15万円程度になることになります。社会保険料と住民税がいくら必要になるかは、休職直前の給与明細を見ればわかります。
なお、退職した場合は、(家族の扶養に入れなければ)健康保険料が約2倍になり、厚生年金保険料の支払いがなくなりますが、払うのであれば国民年金保険料が月15,040円となります(減免制度はあるが、奥さんや旦那さんを扶養していた場合、被扶養者の国民年金も必要になる)。また、住民税は、前年の所得を元に計算されるので、休職した翌年以降の住民税が基本的には安くなり、失業状態であれば、自治体により住民税の減免が受けられる場合があります。
また、任意継続保険を選択した場合は保険料の上限があり、扶養家族がいればそのまま扶養とすることもできるので、詳しくは任意継続保険と国民健康保険どっちにする?で考えてみてください。
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任意継続保険と国保どっちがいいの?
任意継続保険と国民健康保険どっちにする? 退職する場合の一番悩むところですが、よくわからない場合はとりあえず任意継続保険にしておけば良いと思います。 国民健康保険(国保)は、いつでも加入できますが、任 ...
うつ病で考えるのがつらい場合はとりあえず任意継続保険にして、落ち着いてくればどうするか考えればいいと思います。
傷病手当金の金額が休職して給料が安くなると下がるのか?
標準報酬月額は4・5・6月の給料で決まるので、例えば、4月から休職したため、給料が下がったり、休職給のため以前の8割程度しか給料が出なかったため、標準報酬月額が改定されて突然、傷病手当金の支給金額が下がるのではないかと心配になりますが、結論から言うと復帰して働かない限り傷病手当金の金額が下がることはありません。
傷病手当金の支給の算定根拠となる標準報酬月額は、労務不能のために受給する直前の標準報酬月額を元に算定するとなっているため、続けて休職している限り、ずっと同じ支給金額となります。
※参照 受給中の減額について(昭和26年6月4日保文発第1821号)
傷病手当金は、原則として労務不能のため受給する直前の標準報酬日額を基礎として算定することとなっているので、傷病手当金を受給している期間中に給料が減額された場合であっても、傷病手当金の支給額を変更することは適当でない
支給額が上乗せされる場合
一部の健保組合や共済組合などでは、組合独自に傷病手当金に何割かを上乗せして支給することもあります。
これを傷病手当金付加金といいます。この制度が存在するかどうかは、各保険組合に聞いてみましょう。
その他、傷病手当金の支給額が調整される場合は傷病手当金の支給額が調整される場合を確認してください。
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傷病手当金の金額が減るパターンは?
傷病手当金の支給金額が調整されるパターン 傷病手当金を受給する場合、金額が上下することがありますので、予定していた金額と違った!とならないように金額が調整されるパターンを確認しておいてください。 支給 ...
※参考:平成28年3月31日までの計算方法
平成28年4月改正前の計算方法
1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額
まず標準報酬日額とは、標準報酬月額を30で割った額です。
標準報酬月額とは、保険料を算出するために月の給料などの報酬を47等級に区分したものです。通常4月~6月までの給料の平均をみて等級を区分します。
例えば4月の報酬が32万円、5月が28万円、6月が30万円の人の標準報酬月額は30万円です。※報酬(いわゆるお給料)には住宅手当や営業手当、役職手当、通勤手当、残業手当などすべて含みますが、ボーナス(賞与)は含みません(年に4回以上もらっていれば含みます)(健康保険法第3条5項)。
標準報酬日額は標準報酬月額を30で割った額ですので、この場合の標準報酬日額は1万円、その3分の2ということは、1万円×2/3=6,667円(10円未満四捨五入)が1日あたりの傷病手当金になります。
支給額の計算方法
上の場合で1ヶ月休んだ場合、6,667円×30日(待期期間3日間があればマイナス3日)=200,010円(待期3日-20,001円)が支給額になります。
とりあえず、自分の傷病手当金がいくらくらいになるか計算したい場合は、4月から6月までの給与明細書を確認し、所得税や社会保険料や住民税などの控除前の税込の諸手当を含めた総支給額を計算し、3カ月分を足し算して3で割った金額を傷病手当金早見表の報酬月額欄の円以上~円未満の間に入るかを確認します。
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旧傷病手当金早見表(平成28年3月31日まで)
平成28年4月の法改正により、傷病手当金の計算方法が変わりました。この表は平成28年3月までの計算方法ですので、お間違えないようにお願いします。 標 準 報 酬 報 酬 月 額 傷病手当 金日額 等級 ...
そして、等級を確認し、その列の右端の傷病手当金日額が1日の傷病手当金の金額となります。